Tokyo Midtown Design Hub
PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力
開催
終了

東京ミッドタウン・デザインハブ第107回企画展

PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力



基本情報

プロジェッタツィオーネ( Progettazione =「プロジェクトを考えて 実践すること」)とは、英語の「Design」という用語が一般的でなかった第二次大戦後のイタリアで円熟したデザイン哲学・方法論です。それは、消費主義社会において企業の利益を追求するためのデザインとは異なり、社会性のある創造と市民全般への教育を使命とする倫理性に富んだものでした。二部構成の本展は、第一部で1990年代のイタリアでprogettazioneの巨匠 アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリらから直接学び、それを故郷である長崎県小浜町に忠実に移植し開花させた城谷耕生氏の仕事と暮らしを通して、progettazione の核心である「控えめな創造力」を紐解きます。第二部では、地域に生きる人間や自然を中心に据えて創造力を発揮する愛知県常滑市、奈良県生駒市、石川県奥能登、福井県福井市の4組の活動に注目。時代と場所を超え progettazione と本質的な相似形を持つ彼らの活動を通して、これから私たちの生きる時代に求められている創造力の在り方について考えます。

本展は2022年3月にAXISギャラリーで2日間にわたり開催されたトーク「耕す。デザイナー 城谷耕生の仕事」を引き継 ぐ展覧会です。
多くの方々のご協力を経て実体あるデザインに触れられる展覧会として開催の運びとなりました。ぜひ 会場に足をお運びいただければ幸いです。

東京ミッドタウン・デザインハブ 第107回企画展
「PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力」

会期:2024年3月22日(金)〜5月6日(月祝)11:00~19:00 会期中無休・入場無料
主催:東京ミッドタウン・デザインハブ 共催:「PROGETTAZIONE」展実行委員会
運営:公益財団法人日本デザイン振興会

企画:多木陽介・田代かおる・谷口真佐子
クリエイティブディレクション・会場デザイン:川浪寛朗(Hiroaki Kawanami Design)
グラフィックデザイン:古庄悠泰(景色デザイン室) 制作コーディネーション:山崎超崇

「PROGETTAZIONE」展実行委員会:オク・ウンヒ、川浪寛朗、多木陽介、田代かおる、谷口真佐子、 古庄悠泰、諸山朗、諸山岳志、山﨑超崇


展示詳細

■企画者より

本展は、日本の5つの地域(長崎県小浜町、愛知県常滑市、奈良県生駒市、石川県奥能登、福井県福井市)で 従来の資本主義的な価値観や方法論とはまったく異なるパラダイムにしたがって、そこに生きる人間や自然を 中心に据えたかたちで創造力を発揮する人々の活動を扱っています。そのなかで、これらの活動の本質的な意 味を理解するために大いに役に立ったのが、第二次大戦後、消費主義社会の爆発的な発展前夜にイタリアで成立した、イタリアンデザインの基礎をつくった人々の創造力でした。私たちは、この歴史的にも地理的にも距離をもつ両者の間の相似性に注目して、これから我々の生きる時代に求められる創造力のあり方を観客の皆さんとともに考えてみたいと思います。(多木陽介/「PROGETTAZIONE」展実行委員・批評家)

■ 展示コンテンツ

[プロローグ] PROGETTAZIONEとは
・代表的なイタリアの4人のPROGETTISTAたち
-- ブルーノ・ムナーリ、アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリ、アンジェロ・マンジャロッティ
・PROGETTAZIONEの特徴と可能性

[第1部] PROGETTAZIONEの日本への移植―城谷耕生の仕事
・日本にもたらされたプロジェッタツィオーネ
・職人たちと耕す新たなる伝統、5つのワークショップ
・日常に溶け込む形が生成するまで
・人生の耕し方、人生を楽しむ術
・地域とつながる、刈水庵の誕生と移住者たち

城谷耕生(しろたに・こうせい/1968-2020)
1968年長崎県雲仙市生まれ。1991年渡伊しミラノのデザイン事務所を経てフリーランス。アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリと協働関係を結ぶ。 2002年に帰国し、長崎県雲仙市小浜町にStudio Shirotani 開設。自身のデザイン活動のみならず、伝統工芸の職人、大学生とのワークショップを指導し、「新たなる伝統」を共に模索し生み出した。2012年に始まった「エコヴィレッジ構想」をきっかけに、小浜町の地域創生や、もの・人・地域をつなぐ総合的な活動に力を注いだ。2020年12月急病により逝去。(上・城谷耕生氏/写真:在本彌生)

[第2部] 優しき生の耕人たち・新しい時代の「控えめな」創造力

・愛知県常滑市 -- 土の朋輩 [土の創造力を受け取った男たち](展示:スベル)
高橋孝治(デザイナー)、鯉江優次(山源陶苑・TOKONAME STORE)、鯉江明(陶芸家)、谷本和也(風と土・TOALHANT)、水野太史(水野太史建築設計事務所・水野製陶園ラボ)、渡辺敏郎(キング砥石)

中世から900年ほど窯業が続く、日本六古窯のまち愛知県常滑市で、土を基礎とし領域を超えてつながる共同体「スベル」。 製陶所や砥石メーカーの親方と陶芸家、窯業に親密に関わる建築家とデザイナー、農家兼木工職人の6人が日々土に触れてものづくりをし、道具や物質と触れ合い対話する能力について、また、それらを地域で伝え育む活動を紹介する。

・奈良県生駒市 – 裸の王様への手紙 [チロル堂をつくった3人のルーツと活動] (展示:チロル堂)
石田慶子(一般社団法人無限)、吉田田タカシ(アトリエe.f.t. )、坂本大祐(合同会社オフィスキャンプ)、馬場恵子(合同会社オフィスキャンプ インターン)

一昨年グッドデザイン大賞に輝いた奈良生駒のチロル堂をつくった3人は、常に当たり前なことを疑い、おかしいと思ったら「王様は裸だ!」と声を上げることを辞さず、チロル堂を終着点とは思ってもいない。彼らの探求は、結果にもお金にも縛られずに問い続け、問いが問いを呼ぶなかで、思いもかけない発見を呼び、さらなる成果を生み続ける。本展では、プロジェッタツィオーネの思考にも酷似した、この、地下茎のような問いの連鎖による創造思考そのものにスポットを当てる。

・石川県奥能登 -- 奥能登曼荼羅 [大地とともに生き、学び、つくる「まるやま組」と「のがし研究所」]
(展示: 萩野アトリエ/まるやま組・のがし研究所)
萩野紀一郎、萩のゆき

東京で生まれ育ったふたりがアメリカでの生活を経て能登へ移住して20年。木を伐り、すまいをデザイン/ビルドしながら暮らすうち、見えてきた集落の人々の生き様。自然の恵みとそれを活かす昔ながらの里山の知恵を伝承する試みとして、本展ではおもに「土地に根ざした学びの場・まるやま組」と、小豆栽培から始める和菓 子店「の菓子」を紹介する。能登半島地震をきっかけに、これからの「すまいとくらし」のデザインについて、皆さんと一緒に考えられたら幸いである。

・福井県福井市--じわじわ変わる [小さなデザインの教室XSCHOOLから] (展示: XSCHOOL)
原田祐馬 、多田智美、内田友紀、坂田守史(以上プログラムディレクター)、白井瞭(2020年度コントリビュートディレクター)、髙橋要、髙野麻実、田中宏幸、加藤洋、吉鶴かのこ、中 川奈保(以上 ノカテ・メンター)、黒田悠生、水口七海(以上 トンカンテラス・受講者)、 田嶋宏行(RESILIENCE PLAYGROUND・受講者)、中井詩乃(ほんのちょっと・受講者)

2016年秋に開校した、小さなデザインの教室XSCHOOL。専門性や背景、拠点の異な る受講生が、約120日間福井に通い、文化や風土を紐解き、社会を洞察しながら、未来に問いを投げかけるプロジェクトを生み出してきた。地元企業や応援してくれる関係者を巻き込みながら展開するプロセスと場の高揚感、自らもついつい動きだしたくなるような創造の渦により、じわじわと人々やまちに変化が起きている。

■ 展示協力

協力:有限会社シロタニ木工、藤崎均
写真提供:在本彌生、木田勝久、久高良治
城谷氏関連展示協力:刈水庵、株式会社キントー、ナガノインテリア工業株式会社、堀江陶器、池田美奈子、 伊藤晴子、井上公之(鏡山窯)、内田みえ、大橋重臣、熊谷裕介、島田真平、立川裕大、永井敬二、中臣一 、デザイン誌「AXIS」、アネモメトリ、CONFORT、山水郷チャンネル
萩野アトリエ展示協力:生活協同組合コープいしかわ/国連大学サステナビリティ高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IASOUIK)
XSCHOOL展示協賛:荒井株式会社、株式会社タッセイ、株式会社リ・パブリック、XSCHOOLサポーターの 皆様

■ 本展関連書籍
タイトル(仮題) :『プロジェッタツィオーネの思想- ブルーノ・ムナーリ、アキッレ・カスティリオーニ、エンツォ・マーリの言葉』
編著:多木陽介 出版社:どく社 発刊予定:2024年3月
第二次大戦後に花咲いたイタリアンデザインは、その起源において、倫理性と社会性に富み、企業の利益よりも社会性のある創造性を発揮していた。その思想と方法論には今こそ学ぶべきものがあり、それを当時の最も優れたデザイナー三人の言葉を通して丁寧に解説する。